今に専心

初めて父の涙を見たのは亡くなる数日前。
親って、父親って、
娘に涙を見せられないんだなぁ。

呼吸器外して「ありがとう」って言った側から、
涙が一筋。
それは、父の声を聞いた最後でもあった。

人生の最後はいきなり訪れる。
いつかそのうちの、
「いつか」がくる保証などない。

2度とこない「今」に専心しよう。
「ありがとう」って言って、
人生を終えたいから。

父のように。


父の最後通告はいきなりだった。

持病の検診で総合病院を訪れたら、
帰れなくなった。

ナースステーションの向かい。
退院できない患者の病室。

呼吸器系を病んでいたので、
話すのも辛そうだった。

私は、牧之原から飛んで行った。

いつ逝くか分からないと告げられたので、その日は泊まったけど、私も家庭があるので、翌日から通いになった。

海外の姉に様子を伝えながら、姉も帰国の段取りを進めていた。

知らせを受けて3日目に、
夫も父を見舞ってくれた。

管理していたアパートが、やっと売れたんだよ。
子どもたちに、何もしてやれなかった。
アパートのお金を子どもたちで分けてくれ。

夫は義父の言葉を、私と一緒に聞いてくれた。
だから亡くなった後、後妻が持ち逃げして
ずらかろうとするのも捕まえた。

父の遺志だから。
父の最後の
願いだから。

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